がんや潰瘍などの異常がないにもかかわらず、胃の痛みや胃もたれなどの症状が続く病気。国際的な診断基準である「ローマIII基準」では、器質的な疾患が確認されない状態で、「食後のもたれ感」「早期の満腹感」「心窩部(みぞおち)の痛み」「心窩部の灼熱感」の四つの症状のいずれかが6カ月以上前からあり、最近3カ月は継続した状態としている。従来、こうした症状がある患者の多くは、胃下垂や胃けいれん、慢性胃炎、神経性胃炎などと診断されてきたが、1999年に国際的な診断基準が確立し、近年では機能性胃腸症と診断されるケースが増えてきた。東北大学病院の本郷道夫教授らが国内の成人1万人以上を対象に行った調査によると、14%の人が基準の症状を経験していたという。発症の原因ははっきりとしていないが、胃の運動機能障害、胃粘膜の知覚過敏、胃酸の分泌異常などがかかわっていると考えられる。また、ストレスや精神疾患などの影響もあるといわれ、抗うつ薬や抗不安薬が処方されることもある。治療では、薬物療法のほか、食生活の改善やストレスへの対処などへの指導が行われる。