中南米を中心に感染が急速に拡大しているジカ熱に対し、2016年2月1日に世界保健機関(WHO)が宣言した「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」(PHEIC)のこと。ジカ熱は、ジカウイルスを保有するネッタイシマカなどを媒介として広まる感染症だが、感染者の約8割は発症せず、発症しても症状は微熱や発疹などと軽く、数日で治る。しかし、合併症として、急性の末しょう神経障害であるギラン・バレー症候群を発症する例が報告されていることに加え、妊婦が感染すると、先天的に新生児の脳の発育が不十分になる小頭症につながる疑いが強いとされる。特に小頭症に関して、流行国のブラジルでは15年10月の感染流行後、約4000人に小頭症の疑いがあると報告される事態となっている(10~14年の小頭症患者報告数は年間150人前後)。WHOはこうした事態を重視して、感染症の国際的な拡大を最大限防止するよう定めた国際保健規則(International Health Regulation ; IHR)に則り、緊急事態を宣言した。WHOが同様の緊急事態宣言を出すのは、14年8月、西アフリカにおけるエボラ出血熱の大流行に対する宣言以来となる。WHOは、ジカ熱の感染を確認した国・地域は25に上っており、今後1年間で感染者が300万~400万人と爆発的に増加する可能性があると指摘。国際的に協調した対策をとるべきだとして、加盟国・地域に警戒と早期の対応を促し、ジカ熱のワクチンや治療薬、診断方法の早急な研究開発、ジカ熱と小頭症、ギラン・バレー症候群の相関性を調査することなどの必要性を提言した。この宣言を受け、日本の厚生労働省では、中南米の流行地域からの帰国者に対する検査体制を強化し、妊婦が流行地域に渡航するのを控えるよう注意喚起するなどの対策を講じた。同省では今後、ジカ熱を感染症法の4類感染症に追加する方針。