軽度や中等度の意識障害で起こる、幻覚や錯覚を伴った異常な言動、興奮などを呈する状態。病名ではなく、精神状態を表す。突然、落ち着きなく動き回ったり、急に興奮しておかしなことを言ったりするなど、短時間に症状が現れることから急性錯乱状態、急性脳症候群とも呼ばれる。診断基準には、(1)注意の集中や維持が困難になる、(2)記憶障害や、現在の年月や時刻、自分が今どこにいるかなどの見当識の欠如、幻覚、妄想などの症状がある、(3)症状が短期間のうちに出現し、1日のうちで変動する、という3点がある。また、せん妄の中には、脳血管障害やアルツハイマー病の患者などで、夕方から夜にかけて症状が現れる夜間せん妄、長期間の飲酒による重度のアルコール依存症者が断酒したときに起こる振戦せん妄などの種類もある。原因は脳腫瘍や脳炎などの脳の疾患だけではなく、身体の疾患や不調、脱水、過剰な精神的ストレス、薬剤など多岐にわたり、老人や子供、手術後の体力が低下している患者に起こりやすいといわれている。治療は、せん妄を引き起こしている原因(原疾患)への対処、治療が不可欠だが、せん妄自体の症状を抑えるために抗精神病薬が用いられることもある。