細胞小器官の一つであるミトコンドリアの働きが低下することによって起きる病気の総称。厚生労働省が指定する特定疾患の一つ。ミトコンドリアは全身の一つひとつの細胞内に存在し、細胞機能の維持に必要なエネルギーを作り出している。その機能低下は、細胞の活動低下や消滅につながる。エネルギーを多く必要とする神経系、筋、心臓などに症状が出やすいとされるが、どの細胞でも起きる可能性があり、現れる症状もけいれん、脳卒中、精神症状、筋力低下、低身長、糖尿病、難聴など幅広い。原因は解明されていないが、多くの場合は遺伝子の変化に由来するものと考えられており、細胞核にあるDNAと、ミトコンドリアにあるDNAの両方で異常にかかわる遺伝子変化が発見されている。難病情報センターによると、欧米では10万人に9~16人の患者がいるとされるが、日本国内ではまとまった統計が出されていない。治療は、個々の症状に合わせた対症療法が基本であり、根本的な治療法は確立されていない。2015年3月には、熊本大学の富澤一仁教授らの研究チームが、特定の酵素の働きが低下することでミトコンドリア病が発症する仕組みを解明したとする研究報告をアメリカの科学誌「セル・メタボリズム」電子版で発表。酵素の代わりとなる薬剤も開発したとしており、治療薬につながることが期待されている。