高齢者に対する適切な薬物治療のあり方を研究することを目的とする一般社団法人。東京大学大学院の秋下雅弘教授らが発起人となって2016年1月4日に設立された。小児の場合、薬用量は年齢、体重、体表面積などから算出されるため、成長に応じて適切な量が処方されるが、成人後は年齢にかかわらず、一律の量が適用される。しかし、高齢者の場合、薬を分解、排出する肝臓や腎臓の機能低下などが原因で、薬物が体内に長時間とどまりやすくなり、加齢によって薬物感受性も増加するため、高齢者以外の成人に比べて薬効が過剰に出やすい。また、高齢者は生活習慣病や認知症、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの疾患を併発しやすく、複数の薬を服用(多剤併用)することが多く、副作用のリスクも高まる。ほかに、認知機能や視覚機能などの低下が薬の飲み残しにつながり、期待したような治療効果を得られないことも問題化している。なお、アメリカでは1991年に高齢者にとって不適切な薬のリスト(ビアーズ基準)が発表されて高齢者への処方指針となっており、2008年には国立保健医療科学院により、日本版が作成されている。日本老年薬学会は老年医学の専門医や薬学者、薬剤師などが連携し、高齢者の薬理作用、医師と薬剤師の効果的な連携のあり方などを研究。老年薬学に関する認定薬剤師制度なども創設し、専門性の高い薬剤師を養成する。