地球温暖化の予測や影響を評価する国連組織の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が取りまとめた第5次の評価報告書。自然科学的根拠についてまとめた、2013年9月公表の第1作業部会報告書、温暖化の影響などを評価した14年3月の第2作業部会報告書、気候変動の緩和策についてまとめた同年4月の第3作業部会報告書と、それらの内容を横断的にまとめた統合報告書からなる。統合報告書は、同年10月にデンマークで開催されたIPCC第40回総会で採択され、11月2日に公表された。報告書は、温暖化の主な原因は人間の活動である可能性が極めて高いとし、産業革命以前と比較した気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標を達成するためには、1870年からの二酸化炭素総排出量を2兆9000億トンに抑える必要があると分析。すでに1兆9000億トンが排出されており、2011年と同じペースで排出され続ければ、30年程度で許容量の上限に達するという見通しを示した。そして、有効な対策が取られなかった場合には、21世紀末の世界の平均気温は最大4.8度上昇し、海面水位の上昇や食料生産への悪影響、暑熱による死者の増加などの深刻な被害が出ると警告した。一方で、気温上昇を抑えるために多様な道筋があるとし、火力発電所などから排出される二酸化炭素を回収し、地中に封入する技術の活用などの対応策を挙げている。統合報告書は、14年12月にペルーで開催される国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)で報告され、その後の温室効果ガス削減交渉などの議論における科学的根拠とされる。