梅毒トレポネーマという、らせん状の細菌の感染によって引き起こされる性感染症。性的な接触によって感染する。1~3週間ほどの潜伏期の後、第1期の症状として、男性では亀頭、女性では子宮頸部などの局所にしこりや潰瘍(かいよう)ができ、リンパ節の腫れを伴うこともある。その後、2~12週間の無症状期を経て、第2期の症状である皮膚や粘膜の発疹、骨や関節の異常などが見られる。特に、この期間に全身に現れることがあるバラ疹などの赤い発疹は特徴的で、楊梅というヤマモモの実に似ていることが病名の由来となった。感染後3~10年までを第3期といい、臓器や骨に結節、ゴム状の腫瘍などが生じる。感染後10年以降が第4期で、この時期には中枢神経や心臓なども腫瘍に侵され、進行まひ、脊髄癆(せきずいろう)、大動脈瘤(りゅう)などが生じる。現在は、比較的早期に抗生物質による治療が行われており、第3期、第4期に進行することは少ない。日本では、1928年の花柳病予防法、48年の性病予防法の対象疾患とされ、99年からは感染症法の5類感染症(全数把握対象疾患)として、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることが定められた。国立感染症研究所によると、2015年の感染者届出数は10月28日時点で2037件(男性1463人、女性574人)と、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、最多の患者数を記録。特に女性患者の増加率が顕著で、2010年(男性497人、女性124人)から約5倍に増加した。また、女性患者は若い年齢層が多く、15年は15~35歳が437人(約76%)、中でも20~24歳が177人(約31%)と、高い割合を占めている。妊婦がかかると胎児に感染して先天梅毒を発症し、死産や重篤な障害につながることがあるため、専門家が予防と早期受診を呼びかけている。