病院などの医療機関を受診した患者に対し、同じ医療機関の中で薬剤を処方して渡すのが院内処方。医療機関が処方箋(しょほうせん)を出し、機関外の調剤薬局が薬剤を処方して患者に渡すのが院外処方。院内処方の場合、患者は1カ所で診察と処方を受けられるメリットがある。一方の院外処方では、医薬品の使用における有効性や安全性などについて、医師と薬剤師による二重チェックを受けることができ、患者自身が薬局を選ぶこともできる。かつての日本では院内処方が一般的で、医薬分業を目的とした1956年の「医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律」(医薬分業法)施行後も、院外処方の割合は少ないままだった。しかし、院内処方を続ける病院や医師が、薬の仕入れ価格と公定価格の差から生じる薬価差益を得るために、差益の高い薬剤を優先的に、または過剰に処方することなどが問題となり、厚生労働省は院外処方の拡大を本格的に推進。74年には診療報酬改定で処方箋料が大きく引き上げられ、病院や医師にとって院外処方による利益が大きくなった。また、薬剤師に対しても、院外薬局で調剤した際の報酬などが引き上げられた。加えて、厚労省は96年に、薬局と医療機関とが一体的な経営や構造を取ることを省令で禁じた。これらの要因によって分業が大きく進み、70年に0.5%だった分業率は2013年度に67%にまで増加した。ただし、院外処方によって患者の手間が増えることや、料金負担が高くなることなどに対しては、一部から疑問も呈されている。