国立がん研究センター(東京都中央区)が2015年9月2日に発表した、個人が10年間で胃がんにかかる確率を予測したモデル。同センターでは、1993年に茨城県、新潟県、高知県、長崎県、沖縄県、大阪府の6地域に在住する40~69歳の男女約1万9000人から血液の提供を受け、2009年まで追跡調査を実施した。胃がんの大きなリスク因子である、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無と、萎縮性胃炎(慢性胃炎が長期化し、胃粘膜が弱って薄くなった状態)の有無とを血液検査で調べ、リスクの低いほうから順に(A)ピロリ菌、萎縮性胃炎ともに無し、(B)ピロリ菌有り、萎縮性胃炎無し、(C)ピロリ菌、萎縮性胃炎ともに有り、(D)ピロリ菌無し、萎縮性胃炎有り、の4群に分類。これらにそれぞれ、喫煙、胃がんの家族歴、高塩分食品の摂取という、他のリスク因子を加味して、10年間で胃がんにかかる確率を予測するモデルを作成した。その結果、男性の場合、10年間で胃がんにかかる確率は、A群で、かつリスク因子も全くない40歳男性が最も低く0.04%。一方、ピロリ菌が生息できなくなるほど萎縮性胃炎が進行した状態を示すD群で、かつすべてのリスク因子がある70歳男性は最も高い14.87%だった。女性の場合は、A群で、かつリスク因子も全くない40歳女性が最も低い0.03%、D群で、かつすべてのリスク因子がある70歳女性が最も高い4.91%だった。また、A群では、他のリスク因子の有無にかかわらず胃がんにかかる確率が低い一方、BCD群は、他のリスク因子の有無によって胃がんのリスクに幅があることが明らかになった。同センターでは、胃がんリスクの高いグループは生活習慣の見直しや、予防行動、保健行動を心がける必要があるとしている。