薬品の製造、販売を行う一般財団法人の化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)が、国に承認された内容とは異なる方法で血液製剤を製造していた問題。2015年5月に厚生労働省に寄せられた内部告発により不正が発覚し、血友病患者などに用いられる血液製剤12種類の出荷を同省が差し止めた。インフルエンザワクチンについても出荷自粛が要請された。同研究所はその後、原因調査のための第三者委員会を設置。同委員会が15年12月2日に調査結果の報告書を公表した。報告書によると、同研究所は遅くとも1974年には一部の血液製剤で製造工程を国の承認書と異なる方法に変更。90年ごろからは、製造効率の向上のため、血液を固まりにくくする物質のヘパリンを添加するなど、12種類の血液製剤全てで未承認の方法を採っていた。不正の背景には、アメリカで開発された非加熱製剤によって起きた薬害エイズ問題のため国内での加熱製剤製造が急がれるなか、早期の製品化や安定供給が優先された点が指摘されている。95年ごろからは、国の定期調査で不正が発覚しないよう虚偽の製造記録を作成し、一部では古い書類に見せかけるために紫外線を当てて変色させるなどの周到な隠蔽(いんぺい)工作も行った。一連の不正、隠蔽は歴代理事長や幹部が関与して組織的に続けられた。不正な方法で製造された製品は出荷前の国による検定に合格しており、重大な副作用などは確認されていないという。ワクチンについては同様の不正は確認されなかった。問題を受け、同研究所では宮本誠二理事長が辞任したほか、全理事も辞任、降格などの処分となった。また、第三者委員会の報告を受けた厚生労働省は2015年12月21日、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づいて同社を立ち入り検査した。