厚生労働省が2014年11月に施行された過労死等防止対策推進法に基づいてまとめた、過労死の実態や防止対策の実施状況に関する初の報告書。16年10月7日、政府が閣議決定した。白書は280ページにわたり、1980年代後半から過労死が社会問題となり、91年に発足した「全国過労死を考える家族の会」の活動が同法の制定に結び付いた経緯にも触れている。白書によれば、2015年度に過労死で労災認定された人は96人で、ピーク時の02年度の6割に減少。未遂を含む過労自殺による労災認定は93人となっている。白書には、同省が15年12月~16年1月に企業約1万社(回答1743社)と労働者約2万人(回答1万9583件)を対象に行った調査結果も盛り込まれた。この調査によれば、正社員の残業時間が過労死ラインとされる月80時間を超える企業の割合は全体で22.7%。最も割合が高かった情報通信業が44.4%、次いで学術研究、専門・技術サービス業が40.5%という結果だった。労働者を対象にした調査では、疲労の蓄積度が高い人が32.8%、高いストレスを抱えている人が36.9%に及ぶことが判明。疲労の蓄積度が高い人の割合が最も高い業種は宿泊業、飲食サービス業で40.3%、高いストレスを抱えている人の割合が最も高い業種は医療、福祉で41.6%となっている。白書は、「過労死の実態解明には、業界を取り巻く環境や労働者側の状況など、多岐にわたる要因を分析する必要がある」と指摘。同省では幅広い業種の労働者約2万人を10年間にわたって追跡調査し、どのような要因が過労死のリスクになるかを分析することとした。17年以降、毎年の白書で調査の経過を報告する予定。