鼻や口から食道に取り込んだ空気をはき出しながら、食道入口部分の粘膜を振動させて音声を出す方法。喉頭がんや下咽頭がんなどで喉頭の摘出手術を受けた場合、喉頭の一部である声帯や声門も失われる。また、従来は喉頭でつながっていた食道と気道を分離させ、気道の出口としてのどに永久気管孔と呼ばれる穴をあけるため、鼻や口からの呼吸ができなくなる。結果として、通常の呼気と声帯を使った発声ができなくなるため、肺のかわりに食道に空気を取り込み、腹の圧力で押し出して食道粘膜を震わせ、げっぷの要領で音を出す。通常の発声と同様に、舌や歯で音の高低や強弱をつけて言葉にする。習得するまでには数カ月~2年程度の練習が必要とされるが、熟練者は食道発声によって歌うことも可能。食道粘膜を使う発声法にはほかに、気管と食道を手術でつなぎ、肺からの空気を食道に流入させる気管食道シャント法がある。また、食道粘膜を使わず、振動する機械を首に当て、咽頭粘膜を震わせて音を出す電気式人工喉頭などの発声法もある。2015年4月には、ロックバンド「シャ乱Q」のボーカリストで、音楽プロデューサーのつんく♂が喉頭がんの治療で声帯を摘出したことを公表。その後、食道発声法の練習に取り組んでいることが報じられた。