コシヒカリの遺伝子に花粉症の原因物質であるアレルゲンの遺伝子を組み込んだ、花粉アレルギーを起こさない米。農林水産省所管の独立行政法人農業生物資源研究所(茨城県つくば市)などが花粉症緩和米として研究を始め、2007年4月には、サルやマウスによる動物実験では花粉症緩和米の安全性に問題は認められなかったと発表した。しかし厚生労働省が、これを食品ではなく医薬品として扱うべきと判断していることから、いったん開発作業を中断。09年、再び作業を開始し、さらに効果を高めたスギ花粉症治療米を開発した。治療米と緩和米は、米に組み込んだペプチドに違いがある。緩和米はスギ花粉症の原因となるアレルゲンの遺伝子の主要な部分を七つつなぎ合わせたものを使っているが、治療米はスギ花粉症を引き起こす全ての抗原の遺伝子を含む。そのため、より多くの花粉症患者への効果が期待できるという。15年2月から、東京慈恵会医科大学でスギ花粉症治療米の臨床研究が始まり、健康な人で安全性を確認。そのうえで、製薬会社などとともに治療効果を調べる治験に着手する考えとしている。同大学総合医科学センターがマウスを使って行った実験では、安全性と有効性が確認されている。また、以前に開発された花粉症緩和米についても、同大学が13年12月から14年5月に花粉症患者30人を対象とした臨床実験を実施。緩和米80グラムを毎日食べた人は、花粉が飛散してもスギ花粉に反応する免疫細胞がほとんど増えなかったことが確認された。