東京都中央卸売市場築地市場(東京都中央区)の豊洲市場(同・江東区)への移転に関する安全性や費用をめぐる問題。老朽化が進む築地市場は、1991年から再整備に向けた工事が始まったが、工期の遅れなどから中断。その後、計画の見直しが行われたものの、99年に再整備を断念し、2001年に豊洲地区の都市ガス製造工場跡地への移転が決まった。しかし、仲卸業者団体や中央区が築地市場の再整備を望み反対。さらに、移転予定地の土壌調査により、ベンゼンが国の環境基準の4万3000倍、シアン化合物が同930倍検出された。このため、08年7月に都の専門家会議が土壌汚染対策を提言。具体的には、予定地40ヘクタール全域の土壌を深さ2メートルまで掘り下げて新しい土に入れ替え、さらに盛り土をすることで、全体として4.5メートルの汚染されていない土層を造成し、この上に建築物を設置するという対策だった。都は11年に土壌汚染対策工事に着手し、14年2月には新市場の建設工事を開始。同年末には、16年11月上旬に開場することで都と市場業界が合意。15年7月17日、舛添要一東京都知事(当時)が、開場日を16年11月7日にすると発表した。しかし、16年8月31日、小池百合子新都知事が、安全性の確認が不十分であるとして豊洲市場への移転延期を表明。同年9月10日には、主要な建物の地下に盛り土が実施されておらず、地下空洞が造られていることが判明した。東京都は、これまで敷地全体に盛り土を行ってきたと説明してきたが、実際には、専門家会議による提言後の08年12月に開かれた、工事方法を検討する技術会議において、異なる専門家が建物の地下に盛り土を行わず地下空洞を設置する方針を示し、都の担当部署がこの方針に沿って計画を変更。歴代の都知事などに報告をしないまま工事を進めていた。都が事実とは異なる説明をしていたことから、移転問題は混迷。明確な説明を求める声が強まるとともに、移転そのものについての判断が迫られている。