精液中に精子がごくわずかしかない、または全くない、男性特有の病気。男性不妊症の原因の一つであり、100人に1人が該当するとされる。精巣の造精機能に障害があるため、精子自体が作られない非閉塞性無精子症と、精子は正常に作られているものの、精管が塞がれている閉塞性無精子症に分けられ、患者の約8割は非閉塞性。非閉塞性には遺伝的要因だけではなく、病気や化学療法薬を原因とするケースもある。不妊治療では原因に応じて、ホルモン剤の投与、精管の手術、精巣内の精子を採取する精子回収法などが行われる。ただ、非閉塞性の場合には、こうした方法では配偶者の妊娠には至らず、第三者の精子を使用した非配偶者間人工授精(AID)を選ぶケースも多い。2013年5月には、福岡県北九州市のセントマザー産婦人科医院が、非閉塞性の男性の精巣から精子になる前段階の円形精子細胞を採取し、顕微授精を経て妊娠、出産に成功した事例を発表。同院によると、11年9月から13年5月までに、のべ856例の顕微授精を行い、12年6月に日本初となる女児が生まれて以降、80人の出産に成功したという。