国民年金や厚生年金の管理などを行う日本年金機構のコンピューターシステムが外部から不正にアクセスされ、加入者の個人情報約125万件が流出した事件。同機構が2015年6月1日に流出したことを発表した。流出が確認されたのは加入者の基礎年金番号、氏名、生年月日、住所の4項目。基礎年金番号と氏名の2項目が流出したケースが3万370人分、基礎年金番号、氏名、生年月日の3項目が96万8981人分、4項目ともが1万5302人分で、計101万4653人分に上る。このうち年金受給者は52万8795人だった(6月22日時点)。発端は同年5月8日、同機構九州ブロック本部(福岡市)に業務関連を装ったメールが送信され、メール内のURLをクリックした職員のパソコンがコンピューターウイルスに感染したこと。同日、政府の情報セキュリティー対策を担う内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が外部との不審な通信に気づいて同機構に連絡し、感染したパソコンのみをインターネットから遮断した。その後、18日までに他の職員あてにウイルスファイルが添付されたメール100通以上が送信され、少なくとも27台のパソコンが別種のウイルスに感染。22日には九州ブロック本部全体のパソコンを遮断した。情報が流出したのは23日頃で、機構本部(東京都)のパソコン19台から発信されたと考えられている。機構は28日に警視庁から流出データについて連絡を受け、翌29日に全てのパソコンのインターネット接続を遮断した(メールを含めた遮断は6月4日)。今回の情報流出事件では、5月8日に最初の感染が発覚した時点で、他職員に対する十分な注意喚起がなされなかったこと、その後のインターネット遮断などの対応が遅すぎたこと、また、同機構の内規で、個人情報が入ったファイルを共有サーバーや職員のパソコンに移す場合はパスワードを設定しなければならないと定められているが、流出分のうち約45万人分にはパスワードがかけられていなかったことなどが問題点として指摘されている。機構では、流出した個人情報を悪用した他者による不正受給の可能性は低いとしているが、機構関係者などを装った便乗詐欺と見られる被害も報告されており、注意を呼びかけている。また、9月以降、基礎年金番号を変更する方針を立てている。