ある種の蛾の幼虫(毛虫)や成虫に接触することで発症する皮膚炎。幼虫を原因とするものは、毛虫皮膚炎とも呼ばれる。日本国内で多く見られるのは、ドクガやチャドクガ、モンシロドクガなど、主に椿やサザンカなどに発生するドクガ類の幼虫によるもので、体表に数十万~数百万本生えている0.1ミリ程度の毒針毛(どくしんもう)が皮膚に接触して発症する。この毛から注入されるヒスタミンなどの成分がアレルギー反応を引き起こし、じんましんのような赤い発疹が出て、強いかゆみが数日~数週間程度続く。接触時には痛みがなく、1~2日遅れて炎症が出てくるため、蛾の幼虫が原因だと気づかない場合も多い。チャドクガの場合、幼虫が卵から孵化(ふか)するのは毎年5~6月と8~9月のため、皮膚炎の被害も夏に多い。ほかに、イラガやヒロヘリアオイラガなど、桜や梅、ケヤキなどに広く発生するイラガ類の幼虫が体表に持つ鋭いとげ状の毒棘(どくきょく)を原因とするものもあり、こちらは刺された瞬間に強い痛みを感じ、その後、かゆみを伴う皮膚炎が起きる。どちらのケースでも、患部をかくと毛やとげが深く潜り込んで症状が悪化するおそれがあるため、セロハンテープなどを使って毛やとげを取り除き、水で洗い流したうえで、速やかに皮膚科医の診察を受けるのが望ましい。治療では、ステロイド軟こうの塗布や抗ヒスタミン剤の内服などが行われる。