皮脂などの減少によって皮膚が乾燥し、かゆみが起きる症状。乾皮症とも呼ばれる。人間の皮膚では通常、(1)皮脂、(2)水分を逃さない働きを持つ天然保湿因子(NMF)、(3)角質細胞同士をつなぐ角質細胞間脂質、という三つの成分の働きによって潤いが一定に保たれている。これらの物質が減少すると、角質間にすき間が生じて、そこから水分が逃げやすい状態になる。そのため皮膚表面の乾燥が進み、手足やわき腹などを中心に、カサついて白い粉を吹いたり、魚のうろこ状に角質がはがれ落ちたりする。また、皮膚のバリア機能が低下するため、少しの外部刺激に対してもかゆみが生じやすくなる。さらに患部をかくことで炎症が進み、強いかゆみを伴う皮脂欠乏性湿疹になるおそれもある。空気が乾燥する冬季に起こりやすく、春先になると自然に治る場合が多い。皮脂などの分泌量が少ない高齢者や幼児に多く見られる症状だが、冷暖房の普及など、生活環境の変化によって、近年は若者にも増えているといわれる。入浴時に熱い風呂に長時間入ったり、体を強くこすったりして皮脂を落とし過ぎるのを避けることや、暖房時の室内の加湿などが予防に有効とされる。