質量を持った物体が運動したとき、周囲の時間と空間にゆがみを作り、そのゆがみがさざ波のように光速で宇宙空間に伝わる現象。1916年にアルベルト・アインシュタインが一般相対性理論で存在を予言していたが、直接観測されていなかったため、アインシュタインの「最後の宿題」と呼ばれていた。1974年、アメリカの宇宙物理学者ジョゼフ・テイラーとラッセル・ハルスが連星パルサーという二つの恒星が組になっている天体を発見、その公転周期の検証から重力波の存在が間接的に証明されてはいた。二人はこの功績により93年にノーベル物理学賞を受賞している。重力波の直接の観測を目指して、日本では東京大学宇宙線研究所などが大型低温重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」を建設したのをはじめ、各国の研究機関がしのぎを削ってきた。そうした中、アメリカのカリフォルニア工科大学デビッド・ライツィー教授が率いる研究チームが2016年2月11日に会見を開き、観測装置「LIGO(ライゴ)」により初めて重力波の観測に成功したと発表。解析の結果、13億光年先にある二つのブラックホールが合体するときに出た重力波を観測したもので、二つのブラックホールの質量はそれぞれ太陽の29倍と36倍であることがわかった。重力波が観測されたことにより、これまで明らかにされてこなかった天体現象や宇宙の始まりについて解明する重力波天文学の道が開かれることとなった。