人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した細胞を移植する手術。2006年に京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の開発に成功して以降、実際の医療への応用に向けた研究が進み、14年9月に世界で初めての手術が実施された。この手術は、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の高橋政代プロジェクトリーダーを中心とした研究チームが13年8月に開始した臨床研究の一環で、手術を受けたのは目の難病とされる滲出型加齢黄斑変性の患者。患者の腕から採取した皮膚細胞をもとにiPS細胞を作製し、それを変化させてシート状に培養した網膜細胞を患者の網膜に移植した。この手術は、治療法の安全性を検証することが主な目的で、患者の視機能を大幅に回復させることは難しいものの、iPS細胞を用いた再生医療実用化の第一歩として国内外から大きな注目を集めている。研究チームでは術後4年間にわたって安全性、有効性の検証を行う予定。