太陽エネルギーのみで飛行する有人のソーラー飛行機の2号機(HB-SIB)。スイス人のパイロットであるベルトラン・ピカールとアンドレ・ボシュベルグらが中心となって、2003年に発足した「ソーラー・インパルス・プロジェクト」が主導して開発している。太陽エネルギーのみによる世界一周飛行を目指す同プロジェクトは、10年7月7~8日には1人乗りの試作機HB-SIAによる、昼夜連続の試験飛行を実施。連続滞空時間26時間10分19秒、絶対高度9235メートル、獲得高度8744メートルの記録が、太陽エネルギーを使う航空機部門・クラスCSで初となる世界記録として、国際航空連盟(FAI)に公認された。15年3月9日には、HB-SIAの後継機であるソーラー・インパルス2による、太陽エネルギーのみを動力源とした世界一周飛行の挑戦がスタートした。同機は、単結晶シリコンタイプの太陽光パネルを1万7248枚搭載したプロペラ機。両翼の長さは72メートルと大型だが、重量が2.3トンと軽量なのが特徴。当初は出発地のアブダビ(アラブ首長国連邦)からインドや中国、アメリカなどをめぐり、15年内に戻ってくる計画だった。しかし、天候不良に悩まされ、同年6月には中国の南京からハワイに向けて太平洋を横断中、愛知県の県営名古屋空港(小牧空港)に緊急着陸する事態も生じた。その後も加熱による蓄電池の破損といったトラブルにも見舞われたが、出発から1年4カ月経った16年7月26日にアブダビに帰還。太陽エネルギーのみによる初の世界一周旅行に成功した。計17回の飛行で飛行時間は約500時間、飛行距離は4万3041キロメートルに及んだ。