約10万年に及ぶ富士山の火山活動の歴史を表した地質図。1968年に工業技術院地質研究所が発行した初版では、元東京大学地震研究所所長の故・津屋弘逵(ひろみち)教授が溶岩流の分布を詳細に調べた研究をもとに、噴火の歴史を明らかにした。しかし、火山灰の分布をもとにした噴火史研究とは必ずしも整合性が取れていなかった。2000~01年、富士山直下で低周波地震が多発し、富士山噴火への危機感が強まったのを機に、地質研究所などの後身である国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研。茨城県つくば市)が富士山全域の調査研究を開始した。約15年にわたって地層調査やボーリング調査、採取した試料による年代測定などを行った結果、山頂における最後の爆発的噴火は約2300年前であったことなど、溶岩流研究と火山灰研究の両面において矛盾しない噴火史が解明された。また、実地調査などをもとに、山頂から山麓にかけて新たに多数の噴火口を発見した。産総研はこれらの調査、研究結果をもとに、48年ぶりに地質図の改訂を行い、16年7月25日に第2版を発売。噴火の規模や火山灰の影響範囲の精度が高まったことから、今後の噴火予測研究や防災、減災の取り組みへの活用が期待されている。山梨、静岡両県では、この地質図をもとに「富士山ハザードマップ」の改訂を進める予定。