人工的に合成されたクモ糸繊維。2013年5月に、バイオベンチャー企業のスパイバー(本社・山形県鶴岡市)が量産技術の開発に成功したと発表。名称は「クモの巣」に由来する。クモが作るたんぱく質の一種、フィブロインを主成分とするクモ糸は、強度や伸縮性に優れることから「夢の繊維」ともいわれるが、クモは人工飼育が難しく、カイコのように家畜化して糸を生産させることは困難とされてきた。そのため、1990年ごろから遺伝子工学技術を使った人工合成の研究が世界中で行われてきたが、生産コストと安全性が課題となっていた。同社では、クモ糸を作り出す遺伝子を基にして、遺伝子配列などを変えた合成遺伝子を微生物に組み込んで生産効率を向上。同時に、安全性が高く低コストの溶媒で紡糸する技術も開発した。製造された繊維は、鋼鉄の4倍の強度と、ナイロン以上の柔軟性、伸縮性、高い耐熱性を併せ持つうえ、組み込む遺伝子の構造を変えることで、さまざまな性質を持つ繊維が生産可能になるという。また、石油資源に依存しない環境負荷の低い素材でもあり、自動車部品や医療機器など、幅広い分野への応用が期待されている。