マウスの体の細胞に刺激を与えて、さまざまな組織の細胞に育つ性質に変化させたものとされた万能細胞の一種。理化学研究所(理研)発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダー(当時)らがまとめ、イギリスの科学誌「ネイチャー」2014年1月30日付に掲載された論文でその存在と作成方法が発表された。論文では、マウスから採取した体細胞を弱酸性の溶液に浸して刺激を与え、その後、培養することで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化するとした研究結果を報告。「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得」の英語の頭文字を取ってSTAP細胞と名づけた。ES細胞やiPS細胞などの他の万能細胞に比べて作成が容易なうえ、それらの細胞からは作れない胎盤にも育つ能力があるとされたことから、生物学の常識を覆す発見として世界的な注目を集めた。しかし、発表直後から、他の研究者による追試が成功しないことや、論文の記載や画像に不備がある点などが指摘され、存在が疑問視されるようになった。同年2月、理研は論文に不正があったかを内部調査する調査委員会を設置。4月に2件の研究不正があったと認める報告を発表した。また、同月、STAP細胞の有無を確認するための検証実験を開始した。6月には論文の主著者らが「ネイチャー」に論文撤回を申し入れ、7月に同誌が撤回。同月からは小保方氏自身も検証実験に参加したが、結局、STAP細胞の作製は再現できず、12月に実験は打ち切られた。理研では、同年9月に外部の識者による2回目の調査委員会を立ち上げ、不正の解明を進めていたが、同委員会も12月に、STAP細胞とされた細胞は実験の過程で混入したES細胞だったことがほぼ確実とする報告書を発表した。