南極や北極の上空の成層圏に発生するジェット気流で、極点付近を中心とする低気圧の渦。北極の場合、晩秋から春にかけて発生する。極地域を取り巻くように反時計回りに流れ、寒気団(北極気団)はこの強力なジェット気流によって極地域に閉じ込められている。しかし、気流が弱まると渦が中緯度地域へと蛇行し、これに伴って寒気団が南下、中緯度地域にも進入して異常な寒波や降雪をもたらす。こうした変動を「北極振動」と呼ぶ。北極振動は北極と中緯度地域の気圧の差によって起こる現象で、北極の気圧が高く、中緯度地域の気圧が低い「負の北極振動」の場合、極渦の勢いが弱まり寒気が南下。一方、北極の気圧が低く、中緯度地域の気圧が高い「正の北極振動」の場合、極渦の流れが強くなり北極付近に寒気が閉じ込められるため、中緯度地域の寒気が弱まる。北極振動は数十年単位の長い周期で正と負の状態が入れ替わるが、地球温暖化によって北極海の海氷が大きく消失したことから、負の状態が起こりやすいといわれている。2014年1月、マイナス38度まで冷え込んだアメリカ中西部の記録的な寒波も、極渦と負の北極振動が原因とされている。