細胞が細胞内の不要になったたんぱく質を分解して、新しいたんぱく質の材料として再利用する仕組み。細胞内で成分の一部が分解されている可能性については、1950年代から考えられていたが、長年、詳しい仕組みは解明されてこなかった。現在、東京工業大学の大隅良典栄誉教授が、88年に酵母を用いた実験でその仕組みを解明、2016年にはその功績からノーベル医学・生理学賞を受賞した。細胞の中にある小器官や細胞質は古くなると膜に包まれ、分解酵素を持つリソソームという別の小器官と融合、アミノ酸に分解される。このアミノ酸が、新たなたんぱく質を合成するための栄養として再利用される。こうした仕組みをオートファジーという。このおかげで、人は一定期間食事を摂らなくても生きていくことが可能となる。母親の胎盤から栄養を得ていた赤ちゃんが、生後ミルクが飲めるようになるまで栄養不足にならずに済むのも、この仕組みによって栄養を補っているためだとされる。オートファジーは、有害なたんぱく質を除去して細胞内をきれいにする働きや、病原菌を分解する免疫などの役割も担っている。また、パーキンソン病などの神経の病気の一部やある種類のがんにオートファジーが関係していることが明らかになっており、さまざまな病気の仕組みの解明や予防法、治療法の開発への応用が期待されている。