人工的に培養された、ファイバー(ひも)形状の細胞組織。東京大学生産技術研究所の竹内昌治准教授や尾上弘晃助教らの研究グループが開発し、2013年3月にイギリスの科学雑誌「NATURE MATERIALS(ネイチャー・マテリアルズ)」電子版で発表した。細胞ファイバーは、食物繊維の一種であるアルギン酸カルシウムで作ったチューブ状の外殻の中に、細胞と、細胞の増殖に必要な細胞外基質の成分(コラーゲンやフィブリン)を流し込んで培養することで形成される。神経細胞、筋肉細胞、線維芽細胞などさまざまな種類の細胞で細胞ファイバーを作ることができ、それぞれの細胞機能も維持される。外殻は、ピンセットで扱えるほど強度が高く、ひものように自在に束ねたり織ったりすることで、さまざまな大きさの立体的な組織を構築できる。細胞ファイバーを移植する際などには、外殻のみを溶かすことで、ファイバー形状を保ったまま細胞をとりだすことができる。また、iPS細胞などの多分化能を持つ幹細胞にも適用可能で、ファイバー形状のまま分化誘導することができる。再生医療の分野で、血管や神経、筋肉などのファイバー状組織を人工的に作り出すための基盤技術として応用が期待されている。