ノーベル賞6部門の一つで、物理学の分野で優れた業績があった人を顕彰する賞。2015年10月6日、選考元のスウェーデン王立科学アカデミーは、同年の賞を、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長と、カナダのクイーンズ大学のアーサー・マクドナルド名誉教授の2人に授与すると発表した。授賞理由は「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」。ニュートリノは物質を構成する最も基本的な素粒子の一つで、1956年に実在が確認された。地球をも透過する素粒子で、宇宙空間に大量に存在しているが、極めて小さいうえに、ほかの物質とほとんど反応しないため観測が難しく、発見後も質量の有無などが判明しなかった。梶田所長らによる研究チームは岐阜県飛騨市の地下に造られた観測施設スーパーカミオカンデで、ニュートリノに質量がなければ起こらないニュートリノ振動と呼ばれる現象を観測。ニュートリノが微小ながら質量を持つと結論付けて98年6月の国際会議で発表し、世界的な注目を集めた。一方、マクドナルド教授も2001年に太陽から飛来したニュートリノで同様にニュートリノ振動を確認した。これらの観測は、ニュートリノの質量をゼロと想定していた標準理論を書き換えるもので、宇宙の成り立ちや物質の起源の謎に迫る素粒子物理学を発展させた功績が評価された。授賞式は15年12月10日にストックホルムで開かれ、賞金の800万スウェーデン・クローナ(約1億1200万円)は2人で等分される。