フッ化水素の水溶液で、フロンガスやフッ素化合物などの原料となる物質。フッ化水素は、フッ化カルシウム(蛍石)と濃硫酸を混合、加熱して生成する水素とフッ素の化合物で水によく溶ける。弱酸性だが硝酸や硫酸よりも強い腐食性があり、ほとんどの金属やガラスを溶かす。その性質から、金属のさび落としや、半導体、液晶パネルの洗浄など、工業用に幅広く用いられる。人体に対してもきわめて強い毒性を持ち、皮膚や粘膜を通して体内に吸収されると、フッ素イオンに遊離して体内のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合し、骨などを壊死させる。その際、神経組織からはカリウムイオンが放出されるため、激しい痛みを引き起こす。多量に暴露(吸い込んだり触れたり)した場合には、低カルシウム血症、低マグネシウム血症などを招き、死に至ることもある。治療では、付着したフッ化水素酸の水洗除去、グルコン酸カルシウムの投与などが行われる。「毒物及び劇物取締法」で毒物に指定されており、管理や輸送などは厳しく規制されているが、暴露した人が死亡したり重症化したりする事故、事件がたびたび起きている。