植物の葉や根などを丸ごと透明化する研究用試薬。名古屋大学大学院理学研究科の栗原大輔特任助教と同大WPIトランスフォーマティブ生命分子研究所の東山哲也教授らの研究グループが開発し、2015年10月22日にイギリスの科学誌「デベロップメント」オンライン版に研究成果が掲載された。従来、植物の内部を詳細に観察するためには解剖したり、蛍光色素などで染め、紫外線などを当てて顕微鏡で見たりする必要があった。しかし、解剖には熟練を要する煩雑な操作が必要なうえ、薄い切片などの2次元画像から元の3次元構造を構築することが困難という欠点がある。蛍光観察の場合も、植物の葉緑体に存在するクロロフィルという色素自体に蛍光を発する性質があるため、観察が妨げられてしまう。栗原助教、東山教授らの研究グループは、理化学研究所(理研)が動物の生体組織観察のために14年に開発した透明化解析技術「CUBIC(キュービック)」の手法を応用。植物の組織からクロロフィルを除去する化合物の組み合わせを探した結果、クロロフィルを含め、光の透過を妨げる物質を除去するClearSeeを開発した。ホルマリン処理した植物の葉、根、茎、花などをClearSeeに3~4日ほど間浸すと組織が透明化し、蛍光色素で染めるなどして光を当てると、組織の内部が安定した状態で丸ごと観察できる。受粉後にめしべの中で花粉管が伸びていく様子などの観察に役立ち、植物研究推進に役立つことが期待されている。