2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故について、国際原子力機関(IAEA)が総括した報告書。42カ国の専門家約180人の協力で作成され、15年8月31日に公表された。約200ページの概要報告書のほか、計約1000ページを超える専門的な技術解説書5冊からなる。要約部分については日本語訳もある。IAEAのウェブサイトで閲覧できる(http://www-pub.iaea.org/books/IAEABooks/10962/The-Fukushima-Daiichi-Accident)。報告書は事故の主な要因として、「日本では原発が安全だという思い込みがあった」ために事故対応の備えが不十分だったと指摘。発電所の設計や緊急時の対応に弱点があり、長時間の全電源喪失や複数の原子炉が同時に事故を起こすことが想定されていなかったとした。また、原子力の安全や規制に関わる組織が多く存在し、責任の所在が明確ではなかったことも問題とした。周辺住民の健康被害については、事故を原因とする影響は確認されていないとし、子どもの甲状腺がんの増加の可能性も低いと分析した。そのうえで、原発の安全性向上につなげるため、事故の教訓を共有していくことを国際社会に求めた。