オーストリアの精神科医、アルフレッド・アドラーが創始し、後継者たちが発展させた心理学の体系。正式名称は個人心理学(Individual Psychology)であるが、個人を細かく分析する心理学と誤解されかねないため、日本では一般にアドラー心理学と呼ばれている。主な特徴は以下の通り。(1)人間を分割することができない全体であると捉え、理性と感情、意識と無意識などの対立を認めない。(2)人間が抱える問題は自分の精神の内面の問題ではなく、すべて対人関係であるとする。(3)客観的な事実よりも、個人がその事実を主観的にどう解釈するかを重視する。(4)トラウマなどの過去の原因ではなく、現在の目的によって人間の行動を理解しようする。「人を動かす」などの著書で知られるデール・カーネギーといった自己啓発論者や、社会精神医学など、現代のさまざまな心理学に理論的な影響を与えているとされる。近年、日本でも注目されるようになっており、対話形式でアドラーの思想についてまとめた「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社刊)は、2014年6月現在、35万部を超えるヒット作となっている。