ロシアの陸上界で組織的に行われていたことが発覚したドーピング問題。発端となったのは、2014年12月にドイツの公共放送ARDが放送したドキュメンタリー番組で、ロシアが国を挙げた組織的なドーピングを行っている疑惑があると報じられたこと。これを受け、国際陸上競技連盟(国際陸連、IAAF)の倫理委員会、国際オリンピック委員会(IOC)が調査に乗り出し、世界反ドーピング機関(WADA)が第三者委員会を設置して、15年1月から本格的な調査を開始した。WADAは同年11月9日に調査報告書を公表し、禁止薬物の使用の隠ぺい、検査逃れのために組織的な不正が行われていたと認定。同月13日には、ロシア陸上競技連盟が国際陸連から暫定的な資格停止処分を受け、ロシアの陸上選手が国際大会に出場できない状態となっている。16年1月7日には、国際陸連の倫理委員会が、ラミン・ディアク国際陸連前会長の息子パパマッサタ・ディアク氏や、ロシア陸連のワレンチン・バラフニチェフ前会長ら3人をドーピング違反の隠ぺいにより永久追放処分とした。さらなる調査を続けていたWADAの第三者委員会は、16年1月14日、第2回調査報告書を公表。その中で、同委員会は、ラミン・ディアク氏と息子、弁護士らがロシアの陸上選手のドーピング隠ぺいに協力し、事実上の賄賂を受け取っていたと指摘。問題は個人的な不正ではなく、国際陸連の構造的な問題であると非難した。そのうえで、同委員会は国際陸連に対し、会長の任期設定、反ドーピング部門の十分な予算措置などの勧告を行った。