第二次世界大戦時、ナチス占領下のオランダ、アムステルダムで、ユダヤ系ドイツ人の少女、アンネ・フランク(1929~45)によって書かれた日記。1942年6月12日から44年8月1日まで、ナチスによるユダヤ人迫害を逃れて、アンネの一家がアムステルダムの隠れ家で過ごした2年間の生活が克明に記されている。原本は、オランダ国立戦時資料研究所が所蔵。アンネは44年8月4日にゲシュタポ(ナチス・ドイツの秘密国家警察)に拘束され、ドイツ北部のベルゲン・ベルゼン強制収容所に送られ、45年3月にチフスのため、15歳で死去した。戦後の47年に、家族の中でたった1人生き延びた父親が「隠れ家(Het Achterhuis)」という題で日記を刊行。世界中で翻訳され、知られるようになった。しかし、同書は父親による部分的な削除などの編集が施されており、一時は「日記は偽物」だとする説まで出た。その後86年に、オランダ国立戦時資料研究所の編集によって、オリジナル原稿をすべて収録した完全版が刊行された。2009年、ユネスコの「世界の記憶(世界記憶遺産)」に登録された。