シリア中央部のホムス県にある古代都市遺跡。首都ダマスカスから北東約230キロメートルに位置する。「パルミラ」の名は、ナツメヤシを意味するギリシャ語が語源で、アラビア語ではタドモルと呼ばれる。シリア砂漠のオアシス都市として形成されて、紀元前1世紀にローマ帝国の属州となり、シルクロードの中継都市として繁栄した。しかし、3世紀にときの女王ゼノビアのもと、ローマ帝国からの独立を図り、帝国軍に敗北。街は破壊されて廃虚となった。かつて信仰されていた神を祭るベル神殿や列柱道路、公共浴場など、古代ローマ時代の建造物やその跡が数多く残る。1980年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されたこともあり、シリアで最も有名な観光地の一つとなっている。2011年以降、同国で内戦が激化して調査などでの立ち入りが困難になったため、13年6月に消滅や崩壊が危惧される危機遺産に登録された。15年5月には、同国北部などで活動する過激派組織「イスラム国(IS)」がパルミラ一帯を制圧。同年8月、遺跡の一部であるバール・シャミン神殿が同組織によって爆破され、さらに遺跡の象徴的な存在であるベル神殿も破壊された。