布教や伝道を行わず、宗教や宗派を超えて、医療の現場や被災地などで悩みや悲しみを抱える人の心のケアにあたる宗教者。宮城県名取市で終末期の在宅医療に力を注いできた故岡部健(たけし)医師が、海外の医療施設などで活動しているチャプレンという宗教者をモデルに提言した。心の痛みを癒やす宗教者の役割が注目されるようになったのは、2011年3月に発生した東日本大震災がきっかけ。宮城県宗教法人連絡協議会が主体となって「心の相談室」を設置し、数多くの宗教者らが遺族のケアにあたった。その後、この活動を踏まえて、12年4月から東北大学大学院実践宗教学寄附講座が臨床宗教師研修を実施。14年12月までに6回の研修が行われ、約100人が受講した。また、14年度からは龍谷大学大学院実践真宗学研究科でも研修を実施しており、15年1月に同研究科の大学院生11人が修了。15年度からは、社会人の宗教者にも門戸を広げた。京都府では、同大学と提携し、臨床宗教師を自殺防止対策に活用する委託事業を15年度中にも始める。行政機関が臨床宗教師を活用するのは、全国初の試み。15年度から高野山大学や種智院大学でも同様の講座が開講され、養成の動きはさらなる広がりを見せている。