自動車が1リットルのガソリンで走れる距離を調べる検査。自動車の新しいモデルが発売される前に国土交通省が行う型式指定審査の一つとして実施され、測定された燃費(燃料消費率)は、国土交通省審査値として自動車のカタログなどに記載される。検査では、大きなローラーの上にタイヤを乗せて路上走行を再現できるシャーシダイナモメーターという装置に車を乗せ、一定の走行パターンにのっとってタイヤを回転させることで測定する。走行パターンは、1991年に国土交通省が、市街地を想定した発進、停止、加減速などを組み合わせた「10・15モード」を導入したが、2011年4月には、より実際の運転に近づけた「JC08モード」を導入。13年4月以降の自動車カタログにはJC08モードで測定した燃費の記載が義務付けられている。この測定の際、自動車メーカーが国交省に申告する、車種ごとの走行抵抗値(車体の空気抵抗やタイヤの転がり抵抗など)をシャーシダイナモメーターに入力することで、実際の走行に近い燃費の測定が可能となる。走行抵抗値の測定は、1991年から道路運送車両法によって、「惰行法」を用いるように定められている。惰行法では、車のギアをニュートラルの状態にして惰行で走行し、時速90キロメートルから時速20キロメートルに減速するまで、時速10キロメートル減速するごとにかかった時間を計測。これを往路・復路3回ずつ繰り返して、走行抵抗値を算出する。2016年4月20日、三菱自動車が軽自動車の走行抵抗値を改ざんし、燃費データを操作していたことを公表。同社では1991年以降も惰行法とは異なる方法で走行抵抗値を測定していたほか、意図的に有利な数値を選び出す、以前のデータを流用する、目標とする燃費に合わせて逆算する、などの不正を働いていたことも明らかとなった。走行抵抗値の申告にあたっては第三者によるチェックなどが行われないため、メーカー側の不正を発見できないという制度の欠陥が露呈し、国土交通省は不正の防止策を検討している。