光を反射させると、裏面の文様を壁面などに映し出す金属製の鏡。そうした現象は、魔鏡現象と呼ぶ。裏面に文様を施した鏡を薄く研磨すると、文様の凹凸に対応して鏡面にもわずかな凹凸ができ、反射光が裏面の文様を映し出す仕組み。中国では2000年以上前から存在するといわれ、日本では江戸時代に隠れキリシタンによって、十字架やマリア像が浮かび上がる魔鏡がつくられた。京都国立博物館(京都市東山区)の村上隆学芸部長は、愛知県犬山市の東之宮古墳から出土した3世紀ごろの銅鏡、三角縁神獣鏡から3Dプリンターで精密なレプリカをつくり、魔鏡現象が起こることを確認。2014年1月29日に、魔鏡現象の再現実験を公開した。国内出土の鏡で、魔鏡現象が確認されたのは初めてのこと。三角縁神獣鏡は中国の魏王が邪馬台国の女王、卑弥呼に贈ったとの説があり、「卑弥呼の鏡」とも呼ばれている。裏面に神仙や霊獣などの浮き彫りがあり、縁の断面が三角形になっている。国内の古墳から400枚以上が出土している。