昭和天皇(1901~89年)の動静や言行を時系列にまとめた唯一の公式記録。昭和天皇の逝去翌年の1990年に宮内庁書陵部による編集作業が開始され、約24年5カ月をかけて完成。2014年8月に天皇、皇后両陛下に奉呈された後、翌9月に公開された。奉呈本は、和製本で計61冊。分量は過去の天皇実録で最長だった「明治天皇紀」の約1.5倍にあたる約1万2000ページに及ぶ。天皇実録としては初めて口語体で記述されており、皇室に関する事柄のほか、政治や社会、文化、外交などと天皇の関わりも取り上げられている。また、一部の記述が黒塗りされていた「大正天皇実録」とは異なり、黒塗りの部分はない。編集作業は、国内外の公文書や元側近からの聞き取りなど、3000件以上の資料をもとに進められ、第二次世界大戦前から戦中にかけて侍従長を務めた百武三郎の日記など、約40件の新史料も用いられた。従来の通説を覆すような新事実についての記述はないとされるものの、昭和史研究の基礎的資料として注目されている。入札で出版社を決定した後、5カ年計画で公刊される予定。宮内庁では、写しを14年9月9日から11月30日まで皇居内書陵部庁舎で一般公開している。