地震によって損壊した建物など、震災の痕跡を残す構造物のこと。震災の記憶や教訓を後世に伝える目的で保存されることがある一方、維持費の負担が大きいことや、被災者への配慮から撤去される例も多い。1995年の阪神・淡路大震災では、神戸市長田区で焼け残ったコンクリート壁が、のちに淡路市に移され「神戸の壁」として保存された。地震以外の自然災害による場合も含めて災害遺構とも呼ばれ、91年に雲仙普賢岳で発生した火砕流で焼失した旧大野木場小学校校舎や、2000年の有珠山噴火で損傷した住宅などが被災当時の姿のまま、保存されている。東日本大震災の被災地でも、43人が死亡・行方不明になった宮城県南三陸町の防災対策庁舎や、同県気仙沼市の陸地に打ち上げられた大型漁船「第18共徳丸」、岩手県陸前高田市で津波に流されずに残った「奇跡の一本松」など、津波被害による数多くの遺構がある。しかし、その多くは維持費用確保の課題などから解体、撤去され、姿を消しつつある。そのため、東京大学や東北大学のグループが3D画像として記録する取り組みを進めるなど、実物保存以外の方法も模索されている。