恋愛小説「失楽園」(1997年、講談社)などのベストセラーで知られ、2014年4月30日に亡くなった、昭和・平成を代表する作家の渡辺淳一の功績をたたえて15年4月23日に設けられた文学賞。渡辺淳一は1933年北海道生まれ。58年に札幌医科大学医学部を卒業後、整形外科講師を務めながら小説を執筆。70年に「光と影」で直木賞を、80年に「遠き落日」「長崎遊女館」で吉川英治文学賞を受賞、2003年には紫綬褒章受章、菊池寛賞受賞など輝かしい受賞歴を持つ。初期の医学を題材にしたものから歴史小説、伝記的小説、恋愛小説と、豊富で多彩な作品世界を多岐にわたり生み出したその功績をたたえて、渡辺淳一文学賞では、純文学・大衆文学の枠を超え人間心理に深く迫る物語性を持った作品を顕彰する。毎年1月~12月までの1年間で、日本語で書かれた小説で単行本および単行本未刊行の文庫が対象。主催は集英社および公益財団法人一ツ橋綜合財団。正賞は記念品、副賞は200万円。選考委員は、作家の浅田次郎、小池真理子、高樹のぶ子、宮本輝の4人が務める。16年3月31日、同賞の第1回受賞作が川上未映子の「あこがれ」(15年、新潮社)に決まった。川上未映子は1976年大阪府生まれ。2008年「乳と卵」で芥川賞、09年「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」で中原中也賞、10年「ヘヴン」で紫式部文学賞、13年「水瓶」で高見順賞、「愛の夢とか」で谷崎潤一郎賞を受賞している。