ノーベル賞6部門の一つで、文学の分野で優れた業績があった人を顕彰する賞。2014年10月9日、選考元のスウェーデン・アカデミーは、同年の賞を、フランス人作家のパトリック・モディアノに授与すると発表した。授賞理由は“記憶の芸術によって、つかみがたい人間の運命を想起させ、占領下の人々の生活を描いた”こと。同氏は1945年7月30日、パリ近郊で、ユダヤ系イタリア人の父とベルギー人の母の間に生まれた。68年に「エトワール広場」で小説家としてデビュー。以降、第二次世界大戦中のナチスドイツ占領下や60年代初頭を主な舞台に、記憶やアイデンティティーをテーマとしたミステリアスな作品を発表し、72年に「パリ環状通り」でアカデミー・フランセーズ賞を受賞。78年には、記憶を失った主人公が過去の思い出を取り戻そうとパリをさまよう「暗いブティック通り」で、フランス最高の文学賞といわれるゴンクール賞を受賞した。ほかに、94年に映画化された「イヴォンヌの香り」(75年、パトリス・ルコント監督)や、「失われた時のカフェで」(2007年)などの作品がある。フランスでは、同氏作品の熱心なファンを指す「モディアノ中毒」という言葉も生まれたほど高い人気を誇る。授賞式は14年12月10日にストックホルムで開かれ、賞金800万スウェーデン・クローナ(約1億2000万円)が贈られる。