キダ・ゲン。哲学者。
1928年9月7日、新潟市生まれ。3歳のときに、一家で旧満州(現・中国東北部)に移住し、幼少期を過ごす。その後、広島県江田島の海軍兵学校に入学。在学中に、広島市内への原爆投下を目撃した。終戦後は、代用教員や米の闇屋で学資を貯めて、山形県立農林専門学校に入学。在学中にドストエフスキーやドイツの哲学者、ハイデガーなどの本と出合い、哲学を志して50年に東北大学に進む。58年に同大学院修了。60年に中央大学文学部哲学科に専任講師として採用される。以後、63年に同大学文学部助教授、72年に同教授に就任。99年の定年退職まで39年間、同大学で教鞭を取った。この間、ハイデガーの主著である「存在と時間」を独自の視点で論じた「ハイデガー」(83年、岩波書店)などを刊行。日本におけるハイデガー研究の第一人者として知られるようになった。大学退職後も、メルロ=ポンティなどの原書を読む読書会を開き、後進の育成に努めた。主な著作に、「反哲学史」、「現象学」、自叙伝「闇屋になりそこねた哲学者」、エッセー「ピアノを弾くニーチェ」などがある。2014年8月17日、肺炎のため死去。85歳。