クルマタニ・チョウキツ。作家。
1945年7月1日、兵庫県生まれ。本名は車谷嘉彦(しゃたによしひこ)。慶應義塾大学文学部卒業後、広告代理店に勤務しながら私小説を書き始める。72年、雑誌「新潮」(新潮社)で処女作となる短編「なんまんだあ絵」を発表。その後、数作を発表するが、30歳のときに作家生活に行き詰まって東京を離れ、料理場の下働きなどをして関西各地を転々とする生活を送る。38歳のとき、再び文学の道を志して上京。92年にそれまでの作品を集めた短編集「鹽壺(しおつぼ)の匙(さじ)」(新潮社)を刊行し、同作で第43回芸術選奨文部大臣新人賞と第6回三島由紀夫賞を受賞。98年には、長編「赤目四十八瀧心中未遂」(文藝春秋)で第119回直木賞を受賞した。同作は伊藤整文学賞にも選ばれたが、伊藤整とは文学観が違うという理由で受賞を辞退したことが話題になった。また、同作は2003年に映画化もされた。ほかに第25回平林たい子文学賞受賞作の「漂流物」(1996年、新潮社)、第27回川端康成文学賞受賞作の「武蔵丸」(「白痴群」所収、2000年、新潮社)などの作品がある。04年には私小説「刑務所の裏」に実名で登場させた人物から名誉棄損で訴えられ、その後和解が成立したが、翌05年、私小説作家としての廃業を宣言した。妻は詩人の高橋順子。15年5月17日、誤嚥(ごえん)による窒息のため死去。69歳。