オノダ・ヒロオ。元陸軍少尉、牧場主、小野田自然塾理事長。
1922年3月、和歌山県生まれ。42年に、和歌山歩兵第61連隊に入隊し、同年、軍事諜報員(ちょうほういん)を養成する陸軍中野学校に入学。同校を卒業後、44年にフィリピンのルバング島に派遣され、ゲリラ戦を指導する遊撃指揮と、敵の占領地に残って情報を収集する残置諜者の任務に就いた。以来、45年の太平洋戦争終結後も任務解除命令が届かず、戦後も同島のジャングルに身を潜めていた。その後、現地の警察隊との銃撃戦で生存が判明し、74年に元上官の作戦任務解除命令を受けて、約30年ぶりに帰国。翌年には、兄のいるブラジルに移住し、牧場を経営した。84年、ルバング島の経験を生かし、キャンプなどの野外生活を通して青少年を育成する「自然塾」を日本の全国各地で開催。89年には私財を投じて、財団法人小野田自然塾を創設。こうした教育活動が評価され、99年に文部大臣より社会教育功労賞を受賞。2005年には藍綬褒章を受けた。また、全国の小中学校で戦争体験を語る講演会活動にも力を入れた。「たった一人の30年戦争」(東京新聞出版局刊)や「君たち、どうする?」(新潮社刊)などの著書も刊行。11年ころに膵臓がんを患い、14年1月16日、肺炎のため死去。91歳。