ノサカ・アキユキ。作家、歌手、元参議院議員。
1930年10月10日、神奈川県生まれ。父は後に新潟県副知事になる野坂相如。生後まもなく母を亡くし、兵庫県神戸市の親類に養子に出される。中学校在学中だった45年、神戸大空襲で養父を失い、福井県に疎開。疎開先で幼い義妹を栄養失調で亡くす。その後、上京し、窃盗容疑で少年院に収容されていたところを実父に引き取られた。50年、早稲田大学文学部仏文科に入学。同大在学中にさまざまなアルバイトを経て、作詞家の三木鶏郎のもとで働き始め、コント番組の放送作家、CMソングの作詞家などの活動を始める。63年、小説「エロ事師たち」を発表し、三島由紀夫、吉行淳之介らに高く評価される。同年、童謡「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞童謡賞を受賞。68年には、第二次世界大戦の終戦直後に栄養失調で死んだ兄妹を描いた小説「火垂(ほた)るの墓」と、戦後のアメリカへの複雑な心理を描いた小説「アメリカひじき」の2作で第58回直木賞を受賞した。「火垂るの墓」は88年に高畑勲監督がアニメ映画化したことでも知られる。戦中、戦後の体験から「焼け跡闇市派(焼け跡派)」を自称して、歌手、タレントとしても活躍し、ウイスキーのCMソングなどが人気に。71年には「黒の舟唄」がヒットした。72年には編集長を務めていた雑誌「面白半分」に永井荷風作とされる「四畳半襖(ふすま)の下張」を掲載。翌年、わいせつ文書販売の罪で起訴され、表現の自由や「わいせつとは何か」を問い最高裁判所まで争ったが、80年に有罪が確定した。74年に参議院選挙に立候補して落選。83年に第二院クラブから参議院選挙に出馬して当選するが、田中角栄元首相の金権政治を批判して辞職し、同年末の衆議院選挙で田中元首相と同じ新潟3区(当時)から立候補して落選した。歯に衣着せぬ物言いで、テレビの討論番組などでも活躍した。97年に小説「同心円」(96年、講談社)で第31回吉川英治文学賞、2002年に「文壇」(02年、文藝春秋)で第30回泉鏡花文学賞を受賞。03年に脳梗塞で倒れたが、以後もリハビリを続けながらエッセーの寄稿などを行った。15年12月9日、心不全のため死去。85歳。