チン・シュンシン。作家。
1924年2月18日、兵庫県生まれ。両親は台湾出身で貿易商を家業としていた。43年に大阪外国語学校(現・大阪大学外国語学部)を卒業後、同校西南アジア語研究所助手として日印辞典の編集に携わる。第二次世界大戦後、日本国籍を失ったことから同研究所の職を辞し、父の経営する商社勤務などを経て、61年に推理小説「枯草の根」(講談社)で作家デビュー。同作で第7回江戸川乱歩賞を受賞する。初期には推理小説を中心に執筆していたが、67年の「阿片戦争」(講談社)以降は、中国歴史小説に軸足を移す。69年に出版された「青玉獅子香炉(せいぎょくししこうろ)」(文藝春秋)で、第60回直木賞を受賞。また、同年出版の「玉嶺よふたたび」(徳間書店)と「孔雀の道」(講談社)が、翌年の日本推理作家協会賞を受賞した。72年の日中国交回復前後からはたびたび中国を旅し、第3回大仏次郎賞を受賞した「敦煌の旅(とんこうのたび)」(76年、平凡社)など、アジアの歴史をテーマとした紀行や評論も数多く執筆した。また、80~83年の「中国の歴史」(全15巻、平凡社)など、一般向けの歴史書も手がけた。90年、日本国籍を取得。92年には、NHK大河ドラマ「琉球の風」(全3巻、講談社)の原作を書き下ろす。94年に脳出血で倒れた後も精力的に執筆活動を続け、95年に日本芸術院賞、98年に勲三等瑞宝章を受章した。ほかに「太平天国」(全4巻、82年、講談社)や「諸葛孔明」(上下巻、91年、中央公論社)など、多数の著作がある。2014年5月には、著作や資料を集めた陳舜臣アジア文藝館が兵庫県神戸市にオープンした。15年1月21日、老衰のため死去。90歳。