コウノ・タエコ。作家。
1926年4月30日、大阪府生まれ。本名、市川多恵子。大阪府女子専門学校(現大阪府立大学)卒業後に創作を開始。50年に丹羽文雄主宰の「文学者」同人となり、52年に作家を志して上京する。61年、デビュー作の「幼児狩り」で第8回同人雑誌賞を受賞し、注目を集める。63年、「蟹」(「文學界」63年6月号)で第49回芥川賞を受賞。その後、67年に「最後の時」(66年、河出書房新社)で第6回女流文学賞、68年に「不意の声」(講談社)で第20回読売文学賞、80年に「一年の牧歌」(新潮社)で第16回谷崎潤一郎賞、91年に「みいら採り猟奇譚」(90年、新潮社)で第44回野間文芸賞、2002年に「半所有者」(01年、新潮社)で第28回川端康成文学賞を受賞するなど、数多くの文学賞に輝く。サディズムやマゾヒズム、倒錯した性衝動など、日常と非日常が交錯する世界を独自の作風で描き出した。その他の主な作品に「逆事(さかごと)」(11年、新潮社)、「後日の話」(1999年、文藝春秋)、評論「谷崎文学と肯定の欲望」(76年、文藝春秋)などがある。87~2006年まで、20年にわたって女性初の芥川賞選考委員を務めた。1989年に日本芸術院会員、2002年に文化功労者に選ばれ、14年に文化勲章を受章。15年1月29日、呼吸不全のため死去。88歳。