ハラ・セツコ。元女優。
1920年6月17日、神奈川県生まれ。本名、会田昌江。映画監督である義兄の熊谷久虎にすすめられ、35年、女学校在学時に日活に入社。同年、「ためらふ勿（なか）れ若人よ」で女優デビュー。芸名の節子は、同作の役名から取った。37年、アーノルド・ファンク監督による日独合作映画「新しき土」の主役に抜てきされ、日本人離れした美貌で海外でも注目を集める。その後、東宝に移籍し、第二次世界大戦中は、「ハワイ・マレー沖海戦」（42年）などの戦意高揚映画に出演。戦後は46年に東宝を退社、新東宝を経て47年からフリーとなり、黒澤明監督「わが青春に悔なし」（46年）、吉村公三郎監督「安城家の舞踏会」（47年）、今井正監督「青い山脈」（49年）、木下恵介監督「お嬢さん乾杯！」（49年）、成瀬巳喜男監督「めし」（51年）など、数多くの巨匠の作品に出演した。中でも、小津安二郎監督作品に欠かせない女優として活躍。「晩春」（49年）を皮切りに、「麦秋」（51年）、「東京物語」（53年）、「東京暮色」（57年）、「秋日和」（60年）、「小早川家の秋」（61年）の6本に出演し、映画スターとしての人気を確固たるものとした。49年に、「晩春」などの演技で、第4回毎日映画コンクール女優演技賞を受賞。51年には「めし」、「麦秋」の演技で、2度目の同賞に輝くとともに、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。62年、稲垣浩監督「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」を最後に女優を引退。63年、小津監督の葬儀に参列して以降は公の場に姿を見せず、鎌倉市の自宅でひっそりとした生活を送っていた。2015年9月5日、肺炎のため死去。95歳。