ホセ・ムヒカ。政治家、前ウルグアイ大統領。
1935年5月20日、ウルグアイの首都モンテビデオ生まれ。本名、ホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダノ。貧富の差が激しかった同国で貧しい家庭に生まれ、幼少時から花屋などで働いて家計を助ける。10代から政治活動を始め、60年代前半に都市ゲリラ活動を行う武装革命組織「トゥパマロス(ツパマロス)国民解放運動」に参加。以後、トゥパマロスを弾圧する政府と軍部によってたびたび逮捕・投獄され、特に72年、4度目に逮捕された際は、73年のウルグアイ軍事独裁政権成立を経て85年に民政移管が完了するまで、13年間にわたって収監された。釈放後に政治活動を再開し、94年に下院議員に初当選。2009年の大統領選挙で同国の第40代大統領に選出され、10年3月1日に就任。在任中は貧困対策に力を注ぎ、貧困層向けの無償の住宅政策を実施。このほか、14年には、犯罪組織の資金源を断ち、貧困層を犯罪から守るという目的で大麻の売買・栽培を合法化した。また、給料の大半を貧しい人々のための慈善事業に寄付し、古い愛車に乗り続けながら、農場で質素な生活を送る清貧さから「世界一貧しい大統領」と呼ばれ、国民に親しまれた。12年6月には、ブラジルで開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で、欲望にまみれた文明への危機感を訴え、生き方を見直すべきだと呼びかけるスピーチを行い、世界的に注目される。13、14年には、ノーベル平和賞にノミネートされた。15年に、5年間の任期を満了して大統領を退任。日本でも、フジテレビ系の情報番組「Mr.サンデー」が2度にわたって同氏を取り上げて大きな反響を呼び、スピーチを子ども向けに紹介した絵本「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」(14年、汐文社)が16万部を超えるベストセラーとなった。16年4月5日に初来日し、講演やテレビ出演を数多く行ったほか、広島市の原爆資料館などを訪問した。